地域活動AtoZ

2024年12月掲載

volume 12すぎなみ協働プラザ主催「ゆるプラ」の意義と魅力

すぎなみ協働プラザが主催する「ゆるプラ」は、「参加者の“ちょこっと気になる”を持ち寄った闇鍋的サロン」というコンセプトのもとに行われる小さな集まりです。それぞれの参加者からどんな話が出てくるのかを楽しみつつ、自分ごとはみんなにとって良いことに、誰かが困っていることは自分ごとに変えてしまおうという、新しい何かが生まれる可能性にあふれた空間を目指しています。今回の「地域活動AtoZ」では、インターネットの世界のテクニックなどに関する話題を離れ、この「ゆるプラ」についてご紹介します。

「ゆるプラ」とは

2024年度よりスタートした「ゆるプラ」は、月に一度、1時間半ほどの時間を設けて10名程度を定員に開催されています。これまでは水曜の夜に実施する形で進んできており、告知は公式サイトや情報紙、SNSなどで行われますが、毎回のテーマは特に決まっていません。

すぎなみ協働プラザのミッションの一つは、杉並で地域課題の解決に取り組む地域活動団体、NPO、行政などが協働するため、様々な交流を促すこと。しかし、進行役のすぎなみ協働プラザの運営責任者・朝枝晴美さんに始めたきっかけを伺うと、「私たちは普段団体支援を行っていますが、色々な方から色々なお話を伺う機会を作りたいとかねてから思っていました。地域活動に興味がある方、すぎなみ協働プラザとは無縁でも自分の気になっていることを話したい方…。杉並には、私自身もお会いしたことがない色々な方がいらっしゃるので」と、むしろ個人と向き合うことに主眼が置かれているようなニュアンスの言葉が返ってきました。団体交流のための拠点ながら、誰が来るかわからず、どんな話が展開されていくのかはその場次第と設定していることからも、すぎなみ協働プラザとしてのユニークな新しい取組だと感じられます。

朝枝さんにこれまでの成果も尋ねてみると、「この集まりを通じてプラザの講座に参加してくださる方や、地域団体を立ち上げたいと考え始めてプラザを相談先に選んでくれる方がいました。これらはプラザとしての成果ですね。一方で、私としては、みなさんの関心ごとを知ることができたのはもちろん、自分の関心ごとにチャレンジしている方たちの姿を見たり、(プラザ主催の)交流会などで話をした以上に関係をつくることができたり、良い手応えを得られています」とのこと。企画が始まってから半年程度でここまでの成果を感じられるのは、すぎなみ協働プラザの組織としての下地があったり、あるいは参加のハードルを下げたからこそなのでしょう。それでも、このように気軽に集まれる場がそもそも求められていたということも、実は大きな要素なのかもしれません。

ある日の「ゆるプラ」

では、参加する側のニーズがあったのかどうか、主催者の手応えはどのような場が形成されることで成立するのか。私たちサポートチームが実際に「ゆるプラ」に参加してきましたので、みなさんの交流の様子などを紹介しながら見てみたいと思います。

その日の参加者は8名。ざっと眺めてみると、文化団体に所属している方、福祉関係の職に就かれている方、町会役員として様々な企画を実施されている方、こども食堂を運営されている方、商店街愛好家の方など、大なり小なり地域活動に関わっている方がほとんどです。まずは各々の自己紹介から始まり、誰かの自己紹介で話された内容について誰かが詳しく尋ねたり、あるいは誰かがそれを別の方向に転じたりしながら、進められていきます。今回は、最初の方が趣味として音楽を演奏していることに触れたら、次々と音楽に関する「自分ごと」の小話が飛び交っていました。多くはリピーターとのことですが、初めて参加したという方もいらっしゃいます。

時間の経過とともに、具体的に話題の中心となるキーワードが浮かび上がってきます。ひとつは「こども食堂」、そしてもうひとつは「引きこもりの支援」。いずれもその当事者がいらしたこともあり、参加者の関心が自ずとそこに向かった感触がありました。「こども食堂」の方は、その当初の姿から時代を追うごとに目的・対象・場所が多様化してきている様子について発言が重なり、「引きこもり支援」の方も、困難を抱えている人を支えるという構図よりもその人たち同士のつながりをどう促していくかが今は主流になりつつあることが紹介されていました。そして、活発な意見交換の辿り着く先は、やはり「居場所づくり」について。どんな活動に取り組むにせよ、拠点となる物理的な空間をどう見つけてどう維持していくのか、そこが核心的な課題であることを誰もが承知しています。

最後に、参加者の方たちに「ゆるプラ」について質問を投げかけてみました。この場にやって来るモチベーションをお聞きしてみると、「仲間を見つけたい」「参加者と交流したい」「参加者と一緒に地域のことを考えたい」「地域の活動や課題を知りたい」などの声がありました。あるリピーターの方からは、「何かの問題に対して明確な解決案が出るわけでもないが、毎回楽しみに来ている」というコメントもいただきました。これらの回答を聞くだけでも継続していくことには価値がありますし、参加者たちの間で共有できれば何かが生まれてくる潜在的な機運も高まってくるはずです。すぎなみ協働プラザの考える集まりの目的が、参加者から見ても達成されていることがよく理解できる1時間半だったと感じました。

「ゆるプラ」に少しでも興味を持ったら

「1年続けることがひとつの目標でした」と朝枝さんはスタートした頃のことを振り返ります。そして、まだその通過点に至ってはいないものの、開催日や時間の変更を検討したり(2025年からは土曜日午後の開催も検討中)、テーマがあっても良いのではという意見を取り入れようとしてみたり、今後についても思案し始めているところです。

その一方で、やり続けてみたからこそわかった課題も、次第に見えてきたといいます。例えば、この集まりを毎月の予定に入れてくれるリピーターが増えたことはうれしい反面、まだ来たことがない方にどう届けていくべきか。参加者が自分の関心を話すことで考えがまとまったり、少人数ではあるけれど共感を得たり、点としての気付きなどはあるけれど、その点を線にするサポートをするべきかどうか。参加者がさらにつながりの場を求めてくるようになると「ゆるプラ」以外の時間もつくる必要性が出てくるが、どこまでやるべきか、など。

このように、物事を前に進めていけば迫られる対応もその都度発生してくるのはある意味で自然の成り行きですが、参加者自身も参加しながら考えや行動が変わってくることもあるはずです。「ゆるプラ」のネーミングの由来はお聞きしていませんが、おそらく「ゆるい」「ゆるやか」などの単語からイメージされたものでしょう。「名は体を表す」といいますので、ここは主催者が抱える課題もどんどん参加者にひらきながら、共にゆるい雰囲気をゆるやかにつくっていけると良いのではと感じました。毎月開催されているということがとても重要ですので、少しでも興味を持って時間の都合が合う方は気軽に参加いただければと思います。概要などは以下のすぎなみ協働プラザのサイトをぜひチェックしてみてください。

https://member.sugi-chiiki.com/nposupport/yurupla/

2024年12月 執筆:すぎなみ地域コムサポートチーム